先に結論
- 水が1滴も入っていません。全成分は油とロウと粉だけ。水がないので、防腐剤らしい成分も見当たりません。
- 落ちにくさは「膜」と「染める色」の二段構え。樹脂とロウでフタをして、その下で色素が唇に色を置いていく設計です。
- 引っかかったのは色素です。赤104(1)はEWGのスコアが5。「使える範囲の制限」という項目がHIGHでした。理由は後半で説明します。
発売以来ずっと品薄が続いてきた、ケイトのリップモンスター。その03「口紅陽炎」の全成分を、Labonoaの成分データベースと突き合わせて読み解きました。「なんで落ちないの?」の答えが、成分表にけっこうはっきり書いてあります。
いちばんの特徴は「水を1滴も使っていない」こと
全成分表示を最後まで読んでも、「水」という文字が出てきません。出てくるのは、油・ロウ・粉・色素だけです。
これはけっこう珍しいことです。化粧水や乳液はもちろん、ティントタイプのリップにもたいてい水が入っています。水が入っているものは、放っておくと菌が増えてしまうので、防腐剤が必要になります。
リップモンスターには、その防腐剤としておなじみの成分(パラベン類やフェノキシエタノール)が見当たりません。水がないから、そもそも菌が増えにくいんです。唇はどうしても口に入ってしまう場所なので、これは安心できる設計だと思います。
「無添加だからすごい」ではなく、「水を使わない作りにしたから、要らなくなった」。そういう順番です。
ベースは、なめらかに伸びる油ばかり
中身の大部分を占めているのが、この手の油です。
- テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル(低リスク)— 粘りがあって色をよく抱え込む油
- トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(低リスク)— さらっと伸びる軽めの油
- 水添ポリイソブテン(低リスク)— ツヤと密着感を出す、べたつきにくい油
どれも「油」とひとくくりにされがちですが、役割は少しずつ違います。色をムラなく散らす係、するっと伸ばす係、唇にとどまる係。名前は長いですが、やっていることはそれだけです。
落ちない理由その1:唇の上に「膜」を作っている
色持ちを作っているのは、まずこの3つです。
- (エチレン/プロピレン)コポリマー(低リスク)— しなやかで丈夫な膜を作る樹脂
- ポリエチレン(低リスク)— 膜に硬さを足して、形をキープする
- マイクロクリスタリンワックス(低リスク)— 石油からとれるロウ。なめらかで粘りのある膜になる
ほかにも合成ワックスや水添マイクロクリスタリンワックスが入っていて、ロウだけで4種類。このロウと樹脂が、塗ったあとに薄いフタになります。カップに口をつけたときに色が持っていかれにくいのは、このフタのおかげです。
膜を作る成分はどれも低リスク帯でした。「がっちり落ちない=刺激の強い成分を使っている」とは限らない、といういい例だと思います。
落ちない理由その2:色を「置く」のではなく「染める」
膜だけだと、こすれたときに膜ごと剥がれてしまいます。リップモンスターがもうひとつ使っているのが、唇そのものを染めるタイプの色素です。
いわゆる「タール色素」と呼ばれるグループです。落ちたあともほんのり色が残るのは、この4つの働きだと考えられます。
もうひとつ、リップにはあまり見かけない成分が入っています。塩化亜鉛(中リスク)です。Labonoaのデータベースでは「収レン」、つまり引き締める役割のタグがついている成分。リップの処方に入っているのは珍しいので、覚えておくと成分表を読むのが少し面白くなります。
忖度しない1点:赤104(1)の「使える範囲の制限」がHIGH
いいところばかり書いてきたので、気になった点も正直に書きます。
色素4種のうち、赤104(1)についてEWG(アメリカの非営利団体が運営する成分データベース)のページを確認しました。スコアは10段階で5。がんのリスク・アレルギー・発達への影響はいずれもLOWと評価されていますが、「Use Restrictions(使える範囲の制限)」だけがHIGHと出ています。ほかに挙がっていたのは、皮ふへの吸収が高まること、分解されにくさ(moderate)、臓器への影響(low_moderate)などでした。
ここで大事なのは、EWGのスコアは「その成分について心配だという報告がどれだけあるか」を表す数字で、製品の危険度そのものではないということ。そして「使える範囲の制限」は、国や用途によって使っていい場面が決められている、という意味です。日本では、化粧品に使える色素の種類と条件が法律で決まっていて、リップモンスターに入っている4つはその範囲のものです。
ちなみに黄4のページも見ておくと、スコアは4〜5で、こちらは「不純物の混入の心配」がHIGHと書かれていました。がんのリスクはLOW、アレルギーはLOW_MODERATEです。
つまり「使うのをやめたほうがいい」という話ではありません。ただ、この製品の色持ちのよさは色素がしっかり働いてこそで、その色素に報告が集まっているのも事実です。唇が荒れやすい人、色素沈着が気になる人は、毎日重ね塗りするより落とす日を作る、くらいのつき合い方がいいと思います。
うるおい成分は「おまけ」ではない
色持ち重視の製品だと保湿は期待できないことが多いのですが、この製品には植物の油がきちんと3種類入っています。
3つとも、Labonoaのデータベースでは保湿の方向のタグがついています。あわせてトコフェロール(ビタミンE)も配合。これは油が酸化して古くなるのを防ぐ役割も兼ねています。
とはいえ、うるおいを目的に買う製品ではありません。乾燥がつらい日は、下にリップクリームを仕込むほうが現実的です。
質感を作っているのは、細かい粉たち
残りは、見た目を整える粉です。マイカと酸化チタンで色の濃さとツヤを調整し、ラウロイルリシンがなめらかなすべりを出します。ジメチコン(中リスク)と酸化スズ(中リスク)も少量入っています。
なお、全成分表示は必ずしも配合量の多い順に並んでいるとは限りません。「後ろのほうだから少ない」という読み方はしないようにしています。
結局、どんな人に向く?
向いている人
- マスクや飲みものに色を持っていかれるのがイヤ
- 塗り直しの回数を減らしたい
- 防腐剤をできるだけ避けたい
ほかを検討したほうがいい人
- 唇が荒れやすい、色素沈着が気になる
- うるおい重視で選びたい
- ティッシュでさっと落としたい(膜と染料の二段構えなので、落とすときはリップ用のリムーバーが楽です)
「水を使わない」という一つの決断が、防腐剤の有無も、色持ちも、落としにくさも全部決めている。リップモンスターはそういう製品でした。
全成分リスト
テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル/トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル/オクチルドデカノール/ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)/ビスアルキル(C16-18)グリセリルウンデシルジメチコン/イソノナン酸イソトリデシル/水添ポリイソブテン/ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)/パラフィン/合成ワックス/ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)/マイクロクリスタリンワックス/水添マイクロクリスタリンワックス/ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル/トコフェロール/ホホバ種子油/オリーブ果実油/アーモンド油/(エチレン/プロピレン)コポリマー/ポリエチレン/ジメチコン/(チタン/酸化チタン)焼結物/マイカ/ラウロイルアスパラギン酸Na/ラウロイルリシン/塩化亜鉛/酸化チタン/酸化鉄/水酸化Al/硫酸Ba/トリイソステアリン酸イソプロピルチタン/酸化スズ/ホウケイ酸(Ca/Al)/合成フルオロフロゴパイト/黄4/黄5/赤104(1)/赤201/赤202
各成分のリスク評価と役割は、成分名のリンクから個別ページで確認できます。

