「長寿」ブームの裏側で
美容業界でライターとして働いていると、ここ数年「ロンジェビティ(長寿)」という言葉を耳にしない日はありません。ミトコンドリアの健康をうたう赤色光療法、血小板由来の高額な美容液、さらにはサケの精子から抽出したDNA断片を使った最先端トリートメントまで。かつてはニッチだったこのテーマは、いまや美容とウェルネスの中心に座っています。
ある専門家は、ロンジェビティを「生物学的機能を最適化し、活力を維持し、回復力を高め、遺伝的あるいは後天的な脆弱性の影響を軽減すること」と説明しています。つまり、肌や体の老化を細胞レベルでアプローチする、いわば「アンチエイジング」の最終形態とも言えるでしょう。
「タイムカプセルに閉じ込められたように、見た目も体も凍結させたい——そんな願望を、私はまだ持てないでいる。」
高額すぎる「若さ」の値札
問題はそのコストです。アメリカでは、年間約8万1000ドル(約1200万円)以上の収入がないと「快適に暮らせない」とされていますが、全米の年収中央値は約6万2000ドル。そんな中、カリフォルニア州のロンジェビティクリニックの年間会員費は約5万ドル。しかも会員になれば、リキや鍼灸、6,500平方フィートのピクルボール施設も使い放題だそうです。
調査によれば、アメリカ人の87%が「生活の高騰により国は危機にある」と感じています。それでも美容業界は、ますます高額な商品やサービスを次々と打ち出しています。月額125ドル(約1万8000円)のサプリメントを30日分買うか、それともオレンジジュースを買うか——そんな選択を迫られる人がどれだけいるでしょうか。
「長寿」は誰のためのもの?
フリーランスとして働く筆者は、こう問いかけます。「100歳まで生きる方法を考える前に、32歳の今をちゃんと生きる余裕が欲しい」。美容やウェルネスの最先端は、しばしば経済的余裕のあるごく一部の人々だけのものになりがちです。しかし、本当の意味での「健康」や「美しさ」は、高額なクリニックやサプリメントだけがもたらすものではありません。
研究によれば、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理といった基本的な習慣こそが、細胞の老化を遅らせる上で最も効果的であるとされています。高額な施術やサプリメントに頼る前に、まずは自分にできることから始める——それこそが、誰にでも開かれた「ロンジェビティ」の第一歩なのかもしれません。
美容業界に求められる「現実」
もちろん、技術の進歩や新しい知見を否定するつもりはありません。しかし、多くの人が経済的に苦しむ中で、「長寿」という夢物語を売り続けることには違和感を覚えます。美容業界には、もう少し地に足のついたメッセージが必要ではないでしょうか。
「若さを保つこと」よりも「今を健やかに生きること」——そのシンプルな価値観こそ、本当に多くの人に届くべきものだと思います。高額な商品を買えなくても、自分自身の体と心に向き合う時間は誰にでも作れます。まずは今日、自分の生活を見直してみることから始めてみませんか。
本記事は以下の海外メディアの記事を参考に、ラボノア編集部が独自に再構成したコラムです。商品の効能効果を断定するものではありません。
参考記事: Why Try to Live to 100 When I Can't Afford Being 32?

